江戸連講

3月講「家康の外交政策と朝鮮通信使について(仮称)」

日 時:3月20日(水・祝)午後2時~4時
場 所:東京ウイメンズプラザ第一会議室B&オンライン(Zoom)配信
講 師:江藤善章 氏
    1949年北九州市生まれ。早稲田大学卒。埼玉県で高校社会科教員として勤務後、2010年から韓国
    国立木浦大学に留学。帰国後、東日本大地震や能登地震の支援活動の中心メンバーとして活躍。
    また長年にわたり研究課題としてきた日本と朝鮮との歴史についての講演や、パンフルートの
    演奏者(30年のキャリア)としても活躍。今回も講演だけでなく、パンフルートの演奏も
    お願いしています。
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円
(会員は3月末にまとめて支払い。非会員は事前支払い、ただし関係会員との合算可)

2月講「洒落本と随筆にみる吉原遊郭の音楽文化」

音が残されていない江戸吉原遊郭の音楽文化を、文字と絵から解き明かし、その文化レベルの高さの観点から吉原遊郭を見直そうとする、極めてユニークな研究成果を語る

日 時:2月23日(金・祝)午後2時~4時
場 所:阿佐ヶ谷区民センター第一集会室&オンライン(Zoom)配信
講 師:青木慧 氏  東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程在籍
            作詞/脚本家・演奏家(歌/ピアノ)としても活動中
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

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2月講は「洒落本と随筆にみる吉原遊郭の音楽文化で」現地参加30名、Zoom 参加16名でした。講師は東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程在籍中で音が残されていない江戸吉原遊郭の音楽文化を、文字と絵から解き明かし、その文化レベルの高さの観点から吉原遊郭を見直そうとする、極めてユニークな 研究成果を講演して頂きました。①吉原遊郭は言葉・服飾・しきたりなど社会を魅了した吉原ブランド②ガイドブックである吉原細見他洒落本、随筆など文人と遊里は切り離せない関係③遊女と芸者の音楽を浮世絵等から見て取る。それぞれが多種の楽器を奏で、役割は明確。芸者(宴会のBGM)遊女(客との密接な関係維持)④吉原遊郭の音楽情報は随筆にも様々記録されているが、「はやり歌(流行歌・時花歌・巷歌とも)」という言葉により記録された情報が圧倒的に多い⑤【岡崎女郎衆】【潮来出島】など全国から訪れ出入りする遊客により今日まで歌い継がれている民謡の宝庫⑥文学研究に基づき、江戸吉原遊郭の「音」空間を限りなくリアルに「再現」する試みは世界初。吉原のある一夜の音。ざわめき・すががき・足音・遊女の声・酒宴の笑い声・話し声・芸者のBGM。瞑目していると「燗酒もう一本」の気分でした。東京藝大ほか主催の「大吉原展」が炎上しているようですが、粋な文化に今の理屈であれこれ言うのは無粋と思いました。

以上     文責:小嶋 光



1月講「谷中七福神巡り」

日 に ち:2024年1月6日(土)
集合時間:13時(午後1時)
集合場所:JR上野駅・公園口改札出て正面、東京文化会館前
行  程:弁財天(不忍池弁天堂)-大黒天(護国院)-寿老人(長安寺)-毘沙門天(天王寺)
     -布袋尊(修性院)-恵比寿(星雲寺)-福禄寿(東覚寺)
     全行程約5.0㎞ 2時間30分~3時間 7,000歩~8,000歩
参 加 費:会員1,000円、非会員1,500円
新 年 会:「目利きの銀次」 田端北口駅前店(会費3,500円/人)

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1月講は谷中 七福神巡りで、晴天と冬とは思えぬ暖かさに恵まれた街歩きとなり、外部の方も含めて22名が参加されました。JR上野駅・公園改札口正面、東京文化会館前に時間通り集合。圓山代表理事の新年の挨拶の後、案内役の松本氏の先導により出発。最初は、不忍池弁天堂(弁財天・御利益愛敬)にお参りの予定でしたが流石に上野長蛇の列。最後尾に並びましたが、これからの時間も考慮して遠くからの参拝になりました。上野動物園のモノレールをくぐり、清水坂をゆったりと上り護国院(大黒天・御利益富財)長安寺(寿老人・御利益長寿)に参拝。谷中霊園の天王寺五重塔跡にて小休止と恒例の記念撮影を実施。天王寺(毘沙門天・御利益威光)には朝ドラで有名になった「日本の植物学の父」といわれる牧野富太郎の墓があります。JR日暮里駅を抜け緩やかに上る御殿坂を歩いて行くと、谷中銀座商店街に通じる「夕やけだんだん」と呼ばれる階段。出店、富士山の見えなくなった「富士見坂」を下から見学などなかなか歩が進みませんでしたが、修性院(布袋尊・御利益大量)青雲寺(恵比寿・御利益正直)と参拝。最後の東覚寺(福禄寿・御利益人望)までは約1㎞、20分の行程でしたが完遂。無事七福神巡りを終える事ができました。
今回も渡辺さんによるZoomライブ配信を実施し3人の方が参加「七福神巡りのコースを再認識。休みなく歩くのは大変だがZoom参加できて感謝」等のご意見を頂きました。

以上     文責:小嶋 光



12月講「江戸の芸能づくし」

日 時:12月16日(土)午後1時半~5時
場 所:新宿歴史博物館およびオンライン(Zoom)配信
予 定:13:30~15:00 投扇興
    15:15~15:45 落語「粗忽の釘」 花伝亭長太楼師匠
    16:00~16:30 紙芝居「瞼の母(長谷川伸)」寿々方・江戸がたり宗家
            〃「曽根崎心中(近松門左衛門)」寿々方・江戸がたり宗家
    16:30~17:00 落語「抜け雀」 花伝亭長太楼師匠
会 費:会場参加 会員1,000円 非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円 非会員1,000円
忘年会:12月16日(土)午後6時~8時
場 所:「魚雅」 新宿区四谷三栄町15-4 第一原嶋ビル1F ℡03-6709-9615
         歴史博物館からJR四ツ谷方面に徒歩5分
会 費:飲み放題付き。男性一人5,000円、女性一人4,000円
    人数制限あり、20名まで申し込み先着順

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12月講は恒例の「江戸の芸能づくし」で参加者は現地19名、Zoom 5名でした。落語はご存じ花伝亭長太楼師匠の「粗忽の釘」「抜け雀」の2題。江戸がたり家元寿々方さんの大人の紙芝居「瞼の母(長谷川伸)」「曾根崎心中(近松門左衛門)」の2題。粗忽の釘は、引越し先に箪笥を背負ったままなかなかたどり着かない粗忽者の亭主の話。抜け雀は、宿屋に長期滞在する若い絵師が宿賃の代わりに衝立に描いた雀が餌を求めて飛び立つ話。粗忽者と親子の名人絵師の話2題でした。瞼の母は、ご存じ番場の忠太郎も曾根崎心中も文楽、歌舞伎、映画等形を変えて発表され続けていますが、大人の紙芝居も趣が違い興味深い時間でした。各演目の幕間には、江戸連会員である三宮さんのYouTubeによるマジックの配信も行われ、会場参加者、Zoom参加者ともに歓声が絶えませんでした(玄人はだし)。
芸能に先立ち有志12名による投扇興も行われ、江戸連白石事務局長の優勝により今年が締め括られました。「笑門来福」

以上     文責:小嶋 光



11月講「江戸吉原の思案橋・衣紋坂・見返り柳と三都・遊郭の構図」

三都(江戸・京都・大坂)の遊郭がどのような”人集めの構図”を考えて作られたのかについてお話して頂きます。

日 時:11月25日(土)午後2時~4時
場 所:東京ウイメンズプラザ第一会議室&オンライン(Zoom)配信
講 師:松本崇男氏(江戸連会員、坂学会理事長)
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

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11月講は、松本崇男講師の「江戸吉原の思案橋・衣紋坂・見返り柳と三都・遊郭の構図」で、参加者は現地14名、Zoom 13名でした。講師は江戸連会員、坂学会理事長です。三都遊郭には共通して思案橋、衣紋坂(橋)、見返り柳がありそれは地名ではあるが場所を特定する他に何かあったのではないか。遊郭に遊びに行く人々の心を沸き立たせる仕掛けではなかったか?と考察。遊郭以外にもこれらと同名の坂、橋、柳は存在しているが命名の由来がそれぞれにあり興味深い。傾城の成立は天正13年(1585)、大阪で秀吉が大阪三郷(新町、天満など)で営業していた遊女に営業許可を与えたことに始まる。大きな要因は泰平の世の中になった事であるが、賦課金の徴収が一番ではなかったのかと思う。
 ①橋の名前と位置変遷図
 ②三都および長崎の傾城町成立年表
 ③遊郭の坂:思案橋、衣紋坂(橋)、見返り柳
所在地と名称一覧など講師がまとめられた場所、時代、名称のマトリックス表にて時代の変遷と共通点などが明確になり興味深い講演でした。

以上     文責:小嶋 光



10月講「江戸時代における妖怪文化の展開」

現代に繋がる、江戸時代に飛躍的に拡がった妖怪文化。
江戸時代の妖怪の絵画や遭遇談などを通して、その「なぜ」を探る。

日 時:10月29日(日)午後2時~4時
場 所:東京ウイメンズプラザ第一会議室A&オンライン(Zoom)配信
講 師:湯本豪一(こういち)氏  民族学者。日本風俗史家
    著書:今昔妖怪大鑑、妖怪あつめ、妖怪百物語絵巻、百鬼夜行絵巻、他多数
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

報告

10月講は、湯本豪一講師の「江戸時代における妖怪文化の展開」で、参加者は現地15名、Zoom 13名でした。講師は民俗学者、日本風俗史家で川崎市民ミュージアム学芸員、学芸室長を歴任。湯本豪一記念日本妖怪博物館/広島県三次もののけミュージアム・名誉館長。妖怪関連他著書が多数あります。妖怪は自然に対する畏怖、心の不安、闇の中から感じる気配などから想像を逞しくして生まれたと言われている。噂や伝聞などで広まったが圧倒的なインパクトで多くの人に存在をアピールしたのは、描かれることによって視覚情報化されたから。現存する最古の描かれた妖怪資料は中世の絵巻物(一点一点描かれる肉筆)で、大きな広がりにはならなかった。江戸時代における木版印刷技術の発達により幾多の妖怪が錦絵、版本などに登場し誰もが簡単に妖怪に接し、身近に感じる状況になった。①畏怖する怖い②怖くない、可愛い、友達感覚という妖怪の二分化が同時進行した。この展開は現代にも続き、妖怪は日本のユニークな文化として海外からの関心も高まっている。妖怪・幽霊・幻獣という新たな分類もするようになっている。多数の図版の説明により妖怪文化の歩みが良く分かる講演でした。

以上     文責:小嶋 光



9月講「国際情勢から見た、幕末日本の開国」

諸外国の開国圧力に揺れた幕末日本-欧州に於けるクリミヤ戦争の背景のなかで考察する
日 時:9月17日(日)午後2時~4時
場 所:東京ウイメンズプラザ第一会議室B&オンライン(Zoom)配信
講 師:清水学氏(江戸連会員)「中央ユーラシア総合調査会」常任理事
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

報告

9月講は、清水学講師の「国際情勢から見た、幕末日本の開国」で、参加者は現地11名、Zoom 19名でした。講師は江戸連会員で現在「中央ユーラシア総合調査会」常任理事。副題として諸外国の開国圧力に揺れた幕末日本(1850年代中期)-欧州に於けるクリミア戦争(1853~1856)の背景のなかで考察するで、よりグローバルな視点で関連を考えてみるでした。クリミア戦争は①宗教戦争、東欧・中東における宗教的覇権抗争が一つのきっかけ②ドナウ川が黒海に注ぐ所とコーカサス山脈地域を抑えることによる東西海運流通の掌握③クリミア・タタール人などの人種問題等、現在のウクライナ・ロシア戦争の状況と根本的に同じであると思い、第3次世界大戦に進展していく可能性を危惧しました。また、クリミア戦争における参戦国の意図、力関係により開国について日本は対応に苦慮したが、クリミア戦争の情報収集を詳しく行い、ロシアが守勢に回っており、英仏側が攻勢にでていることを認識していた。開国プロセスは日本対米欧列強との力関係で進んだと思っていましたが、同時期に起きたクリミア戦争との関連は新たな視点を得た講演でした。

以上     文責:小嶋 光



8月講「江戸の旅と食」

日 時:8月12日(土)午後2時~4時
場 所:東京ウイメンズプラザ第二会議室&オンライン(Zoom)配信
講 師:青木直己氏
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

報告

8月講は、青木直己講師の「江戸の食と名所と旅」で、参加者は現地17名、Zoom 15名でした。
江戸時代の庶民は旅行好きで、思っていたよりも色々な場所に旅に行っていたことを知りました。信仰のために、遠くは伊勢神宮へお伊勢参りに行ったり、関所手形が必要ない近場(武蔵御嶽神社や秩父三峯神社など)に行ったりしました。旅の行程はもちろんのこと、旅の楽しみである食について、何を食べたかの記録が詳細に残っていることが非常に興味深かったです。歩いて旅をするには、エネルギー補給は必須であり、せっかく食べるならその土地の名物を食べたいと思うのは、今も昔も変わらないのでしょう。また、14代将軍徳川家茂が幕末に江戸から大坂へ行った際に、庶民と同様に、土地の名物を食べていたことは面白かったです。講師の著書『幕末単身赴任 下級武士の食日記』を読み、NHKの時代劇「幕末グルメ ブシメシ!」も見たことがあるため、別の機会に武士の食に関する話も伺いたいと思いました。

以上     文責:山本 秀美



7月講「平家物語」

日 時:7月15日(土)午後2時~4時
場 所:東京ウイメンズプラザ第一会議室&オンライン(Zoom)配信
講 師:川島信子氏   琵琶奏者
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

報告

7月講は、川島信子講師の「琵琶~その音と語りの世界~」で、参加者は現地38名、Zoom 9名でした。講師は桐朋大学芸術学科卒業。薩摩琵琶を鶴田流、岩佐鶴丈に師事。一日体験教室「まなびわ」を毎日開講中。NHKの「邦楽のひととき」出演。琵琶楽コンクール上位入賞多数。古典のみならず洋楽器と共演し現代音楽にも挑戦し幅広く活動されています。
講演の内容は実演①「祇園精舎」琵琶という楽器について(余韻の音が琵琶の魅力。聞くぞという心構えがあれば良さが伝わる。歌ものと語り物、琵琶は物語を伝える語り物)実演②「那須与一」何故、琵琶で平家物語を語るのか(与一は曲中17歳。人が死なない物語が良い)実演③「壇ノ浦」琵琶の可能性について(薩摩琵琶の流れをくむ鶴田流の創始者である鶴田錦史が1965年の映画「怪談」のために作った。今迄の琵琶には無かった革新的な演奏をした。弦の太さ、撥を本体に当てる等)実演④「花嫁人形」(「なぜ泣くのだろう」を物語として琵琶の音色と共に伝えたい)のスケジュールでした。実演を堪能するとともに講師の琵琶に対する愛情を感じる講演でした(質疑応答では多種多様な質問が多数ありました)。

以上     文責:小嶋 光



6月講「黄表紙を楽しむ(続編)」

日 時:6月18日(日)午後2時~4時
場 所:東京ウイメンズプラザ第二会議室&オンライン(Zoom)配信
講 師:神山直樹氏  江戸連会員
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

報告

6月講は、会員の神山直樹講師の「黄表紙を楽しむ(続編)」で、参加者は現地15名、Zoom 16名でした。2月講「黄表紙を楽しむ」が大変好評で、駆け足となってしまった「私の選ぶ黄表紙10選」を、あらためて聴くことができました。
黄表紙というジャンルを切り開いた最初の作品や、あの大田南畝に「古今の大出来大出来」と評された山東京伝の出世作、黄表紙の最高傑作と言われる作品など、バラエティに富んだ10の黄表紙について、あらすじ、表紙、名場面を中心に説明を受けました。黄表紙を理解するためには、当時の流行や中国の詩、歌舞伎や能など、色々な知識が必要でかなり手強いですが、江戸時代の人々が黄表紙の何を楽しんでいたのか、垣間見ることができた気がします。絵の余白に文章が配されているため場面の想像はしやすいですが、ひらがなやカタカナが多用されているのに、読めそうで読めません。古文書を勉強中の私は何とも歯がゆい気持ちになりましたが、江戸時代の人々と同じように、駄洒落やナンセンス、パロディを純粋に楽しもうと思い直しました。

以上     文責:山本 秀美



5月講「江戸を制覇した醸造業~“酒は関西もの、醤油は関東もの”の何故?」

日 時:5月21日(日)午後1時30分~3時30分(※開始時間がいつもと違います!)
場 所:東京ウイメンズプラザ第一会議室A&オンライン(Zoom)配信
講 師:宮川都吉氏  江戸連会員・農学博士
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

報告

5月講は、会員で農学博士の宮川都吉講師の江戸を制覇した醸造業「酒は関西もの、醤油は関東もの」は、なぜ?で、参加者は現地21名、Zoom 14名でした。今回の講演の基は日本酒の講演もしている宮川講師に「同じ醸造の醤油の話は」とのアプローチがあっての事だそうです。酒も醤油も同じ醸造業であるが、酒造りは難しいが結論です。醤油醸造は紀州の漁師が銚子に移住し、関西の醤油製造法を伝えた。下総(銚子・野田)で醤油醸造が成功したのは、①原料(大豆、小麦)の調達が容易、②干鰯を資金源とした大規模化、③江戸への舟運の利便、④江戸の食文化に最適な調味料、⑤高濃度の塩により腐造の恐れなく比較的容易に醸造産物が得られる。対象的に塩を使わない酒の醸造には、極めて高度な技術が必要。江戸の酒造業は関西酒造技術との差は大きく、火入れ処理と製品管理の初歩的な問題で多くの酒屋が破綻した。醸造の工程は似ているが、醤油は耐塩性の微生物、酒は水と技術が核心だと思いました。
(講師私見、なぜ醤油醸造に小麦が使われるか?)小麦に含まれる蛋白質(グルテン)がうま味物質グルタミン酸となり、醤油諸味に大量蓄積するため、との見解は「味の素」の商品化の事と共に興味深かった。

以上     文責:小嶋 光



総会および4月講「西宝珠河岸・小流寺縁起から利根川東遷を再考する」

日 時:4月23日(日)13:30~16:00
    13:30~14:00 総 会「2022年度活動報告と決算・2023年度活動方針と予算・その他」
        *欠席の場合、代表理事圓山さん宛てに「江戸連理事会」へ委任状を送信して下さい*
    14:00~16:00 講演「西宝珠河岸・小流寺縁起から利根川東遷を再考する」
        講 師:新實正義氏(江戸連会員)
場 所:東京ウイメンズプラザ 第一会議室
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

報告

4月講は、会員の新實講師の庄和町・西宝珠河岸「小流寺縁起」から利根川東遷を考えるで、参加者は現地18名、Zoom 9名でした。まず、今回の講演の基となる「小流寺縁起」考の著者、所利喜夫が講師の新實さんの奥様の従兄であり、毎年、年始の時に酒を酌み交わしていたという偶然に感嘆の声が響きました。4年程前にご逝去したため、直接話を聞けなかったそうです。
 1. 東遷事業肯定説(歴史的な資料はなく、幕府は国策として施工したことを実証しなければならなかった。基本的に再検討)
 2. 東遷事業疑問説(江戸初期についての論文はおおむね「新編武蔵風土記稿」や「下総国旧事考」といった後代の記述に基づいており、同時代の確実な文書、記録による研究の必要性が強調された)
 3. 東遷事業否定説(事業の最大の狙いは舟運の開発と安定であり、常陸川への利根川の放出はその結果としての現象で当初から目的化されたものではない)
「小流寺縁起」を読み解くことにより、1~3の説を確定できるかとの講演だと理解しました。質疑応答は熱の籠った議論となりました。今回の講演もそうですが、新實講師の膨大な資料の読み込みには感服します。

以上     文責:小嶋 光



3月講「江戸の上水道はどのように整備されたのか」

日 時:3月19日(日)午後2時~4時
場 所:東京ウイメンズプラザ&オンライン(Zoom)配信
講 師:金子智氏  東京都水道歴史館 企画調査責任者 近世考古学専門
著 書:「お江戸の町の上水と下水」「江戸の上水整備とその技術」「近世城郭の瓦」
    「近世城郭の考古学入門」他、多数
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

報告

3月講は、金子智講師の江戸の上水道はどのように整備されたのかで、参加者は現地21名、Zoom 17名でした。金子講師は、東京都水道歴史館の企画調査責任者で近世考古学専門(発掘調査)、著書は「お江戸の町の上水と下水」「江戸の上水整備とその技術」「近世城郭の瓦」「近世城郭の考古学入門」他、多数あります。日本に本格的な上水道が整備されるようになったのは、江戸時代。各地に造られた上水道の中で、最も大規模なものが徳川幕府のお膝元、江戸の上水との事から始まりました。江戸に上水が整備されることになった大きな理由は、人口が増えるまでは井戸(堀井戸)や湧水だったが、人口増に伴う飲料水の不足により別の場所から清浄な水を引いてくる必要があったため。神田上水は『寛永江戸全図』や『江戸図屏風』に描かれていて一番古い上水。溜池上水は『江戸図屏風』にも描かれている他に、江戸市中の発掘調査でその痕跡と思われるものがいくつか発見され、考古学的に立証された。玉川上水の完成後その分水として青山・三田・千川の3上水、亀有上水(本所上水)も造られ、神田上水と共に「江戸の六上水」と呼んでいる。しかし神田・玉川上水以外はほどなく一斉に廃止となった。明治31年、淀橋浄水場完成の3年後まで神田・玉川上水は使い続けられた。
内容の豊富な講演で、詳細(発掘調査等)について、また講演をお願いしたいと思いました。

以上     文責:小嶋 光



2月講「黄表紙を楽しむ」

日 時:2月23日(木・祝)午後2時~4時
場 所:東京ウイメンズプラザ&オンライン(Zoom)配信
講 師:神山直樹氏(江戸連会員)
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

報告

2月講は、神山直樹講師の「黄表紙を楽しむ」で、参加者は現地23名、Zoom 17名でした。
古文書連の講師でもある神山講師は「黄表紙のファンであり」「私はこうして黄表紙を楽しんでいます」との始まりでした。黄表紙の特徴としては<大人向けの絵本である>に尽きるとのこと。<なぜ黄表紙というか>表紙が萌黄色で「青本」と呼ばれていたが植物染料のため褪色が早くすぐ黄色になった。<黄表紙の手法>しゃれ、うがち、逆転、誇張、パロディーなど個々の場面の絵や文章に仕掛けた作者の工夫を発見し楽しむこと。<歌舞伎・遊里を知らないとわからないことが多い>現代の読者には謎解きのようなところも多い。<江戸で出版された>地本(問屋)江戸の地で刊行された出版物。草双紙、浄瑠璃本、洒落本、人情本など。書物(問屋)「物の本」と呼ばれる仏書、儒書、漢籍、国文学など京、大坂の版元の支店。など項目に沿った実際の黄表紙の絵での説明でした。
黄表紙の変遷、黄表紙の作者たち等の説明に、時代背景に大きな影響を受けていたことが理解できました。私の選ぶ黄表紙10選は説明時間が無くなり駆け足となり、次回を期待する連衆も多いのではないでしょうか。

以上     文責:小嶋 光



1月講「池上七福神めぐり」

日 時:1月7日(土)午後1時
集合場所:東急池上線 池上駅南口
行 程:曹禅寺~微妙庵~本光寺~厳定院~本成院~妙見堂~養源寺
    約5.5Km 3時間~3時間半
その他:案内図当日配布、新年会はありません
参加費:会員1,000円、非会員1,500円

報告

1月講は池上七福神めぐりで、天気予報がハズレ晴天に恵まれた街歩きとなり、外部の方も含めて19名が参加されました。案内役の松本氏、小嶋により東急池上線池上駅南口を出発。最初は、曹禅寺(布袋尊)にお参り。池上線のガードを潜り抜け微妙庵(毘沙門天)に到着。ここで、圓山代表理事の新年の挨拶がありました。次は第二京浜の大通りを横切り少し上り坂を歩き本光寺(大黒天)に。この大黒天は以前池上警察署裏の馬頭観音堂にあったようで、まだ新しいお堂でした。再度第二京浜を渡り池上梅園にて小休止。厳定院(弁財天)をお参り。その後、新実さんの手作り資料「池上本門寺を散策してみませんか」により日蓮聖人御荼毘所跡に建立された多宝塔、狩野探幽墓所、紀州徳川家墓所等解説付きの散策を楽しみました。後半は本成院(福禄寿)にお参り。池上本門寺総門内にて松本さんの説明後、参加者の足腰を考慮して、池上会館のエレベーターを使用しての移動予定でしたが、江戸連のぼり旗を先頭に、96段の此経難持坂を健脚の人が上りました。妙見堂(樹老人)お参り後も急な階段である妙見坂を元気に下りました。最後の養源寺(恵比寿天)には寒桜?も咲いており、華やかに無事七福神廻りを終える事ができました。
今回も渡辺さんによるZoomライブ配信を試行実施し7人の方に視聴して頂きました。ご意見を参考に今後も活動できれば良いと思います。

以上     文責:小嶋 光



2022年12月講「江戸の芸能を楽しむ」

日 時:12月10日(土)午後2時~4時
場 所:堀切菖蒲園「静観亭」およびオンライン(Zoom)配信
演 目:・江戸の大道芸 光田憲雄氏&神田鶴和女史、他。大道芸伝承家
    ・落語     花伝亭長太楼師匠 江戸連会員
会 費:会場参加 会員1,000円 非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円 非会員1,000円

報告

12月講は恒例の「江戸の芸能を楽しむ」で参加者は現地14名、Zoom 13名でした。落語はご存じ花伝亭長太楼師匠の「へっつい幽霊」「御神酒徳利」の2題。幽霊話と占い話(眉唾)で合間に鑑賞した大道芸との繋がりを感じました。
大道芸は1. 物売り(納豆、浅利、魚、飴、七味唐辛子) 2. 六魔(人相、手相観) 3. 南京玉すだれ 4. 地獄極楽(説法?) 5. 女霊媒師 6. 心霊護符売り(心霊術)等、盛たくさんの出し物を楽しみました。
会場は広く、小人数の観客でしたが、浅草演芸場?の雰囲気を少し味わうことが出来、笑う門には福来るでした。

以上     文責:小嶋 光



2022年11月講「紅葉の小石川植物園散策」

日 時:11月19日(土)午後1時半
集合場所:小石川植物園正門
(小石川植物園の場所がわからない方は、午後1時10分に丸ノ内線「茗荷谷駅」改札口→圓山さんが案内)
ガイド役:長田敏行氏(元小石川植物園長・元東大理学部教授、江戸連会員の宮川氏友人)
参加費:会員1,000円、非会員1,500円(小石川植物園入園料込み)

報告

11月講は、長田敏行講師の晩秋の小石川植物園を散策するで、参加者は現地38名でした。講師は元小石川植物園園長(17代、19代の二度)・東大理学部名誉教授、法政大学名誉教授、会員の宮川さんの友人で植物園の歴史や植物の一つ一つに至るまで何でも知り尽くしている方でした。小石川植物園は徳川綱吉将軍就任前の白山御殿敷地(面積5万坪)であり、現在地は最大時であった吉宗時代の面積をほぼ反映している(48,880坪)。
江戸時代の御薬園変遷の中で南北(和気流・丹波流)の御薬園の栽培植物が小石川に移された。江戸期、小日向には切支丹屋敷が設けられていたり、江戸以前では貝塚が発見されたり古墳があったりで、昔から人々が住んでいた所であった。
植物園内には貴重な植物が多く、歴史的なメンデルのブドウ、リンゴ(ニュートンの庭に生育)があった。特にイチョウは平瀬作五郎が精子を発見した大イチョウも見学。イチョウは中生代には世界中に広まっていたが(日本にも500万年前には生育)、気候変動で恐竜の絶滅時に全滅に近かったが中国南西部のみに残った。日本にはこれが平安時代に入って来た。現在のイチョウは自然に増えたのではなく人の力で増えた。などの歴史的説明を楽しく聞きました。今回、野外講習でのZoom中継のテストを実施、問題点の確認まで行いました。久しぶりの江戸歩き、多数の参加者で園内は拡声器使用不可とのこともあり、なかなか講師の声も届かない所もありました。Zoomの現地使用も検討課題と思いました。

以上     文責:小嶋 光



2022年10月講「佐賀鍋島の伝統文化」

日 時:10月29日(土)午後2時~4時
場 所:東京ウイメンズプラザ第2会議室&オンライン(Zoom)配信
講 師:荻原延元氏(江戸連会員) 日本画家。川村学園女子大学名誉教授
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

報告

10月講は、荻原延元講師の佐賀・鍋島の伝統文化で、参加者は現地17名、Zoom 21名でした。
まず、武蔵野美術大学日本画学科の後輩である鈴田滋人氏との出会いとその後についての興味深い話から始まりました。鈴田滋人氏は日本画家の道を志すも父が鍋島更紗研究から考案した、独自の木版摺更紗技法を継承して染織の道に進み、2008年に若干54歳で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された方です。この方との関わり合いから講師は佐賀・鍋島の磁器、鍋島更紗にのめり込んで行かれました。
鍋島家による日本初の磁器生産、伊万里焼とヨーロッパの磁器との関わり、御用窯による鍋島様式の確立などスライドに合わせて歴史、制作工程が良く分かる説明でした。鍋島更紗については父上鈴田照次氏の業績と鈴田滋人氏の現在の工房での作成方法の説明などをしていただきました。また、講演後貴重な更紗の帯、袱紗などの現物をお持ちいただき現地参加の会員には眼福のひと時でありました。

以上     文責:小嶋 光



2022年9月講「感染症の歴史と江戸時代の施策」

日 時:9月11日(日)午後2時~4時
場 所:東京ウイメンズプラザ第1会議室B室&オンライン(Zoom)配信
講 師:宮原一敏氏(江戸連会員)
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

報告

9月講は、宮原一敏講師の「感染症の歴史と江戸時代の施策」で、参加者は現地17名、Zoom 23名でした。
感染症の定義から感染症の分類、歴史。感染症の歴史は人類の歴史、人類の移動とピロリ菌の拡散は同じ経路と見られるがピロリ菌のほうが先に存在していたのではないかとの説明。縄文人と弥生人のDNAの違いからY染色体ハプロタイプ解析の話。江戸時代の感染症、御役三病(疱瘡、はしか、水疱瘡)三日コロリと江戸幕府の対応についての説明。新型コロナウイルスと今後についてでは、今迄の感染症の歴史から「微生物と共生出来る生物だけが、自然に選ばれ進化できたのかも知れない」「新しい生活様式」の中で生きてゆくのだとの私見。講師の日本人のルーツに関する思いの強さを感じる講演でした。 また、通常の質疑応答とは趣が異なり、会員である水越さんよりの専門家としての講演資料の補完、補正の提言時間も今回の講演と共に有意義でした。

以上     文責:小嶋 光



2022年8月講「西宝珠花河岸の釜屋商人」

日 時:8月6日(土)午後2時~4時
場 所:東京ウイメンズプラザ第1会議室B室&オンライン(Zoom)配信
講 師:井上晃氏(江戸連会員) 山口県岩国在住
会 費:会場参加 会員1,000円、非会員1,500円
    Zoom参加 会員500円、非会員1,000円

報告

8月講は、会員の井上晃講師の「西宝珠花河岸(にしほうしゅはなかし)の釜屋商人」で、参加者は現地18名、Zoom 22名でした。
井上氏のご先祖様は、釜屋商人の釜屋中島久七(釜久商店)であるとのこと。近江辻鋳物師が起源である近江日野商人の一派、釜屋商人たちは埼玉県の西宝珠花河岸に多く住んでいた。西宝珠花河岸は、江戸への舟運の輸送拠点である江戸川・利根川水系に位置し、行きは江戸へ年貢米や地方の特産物を送り、帰りは江戸からの品物を地方へ輸送する集散地となることで発展した。江戸連で訪れたことのある千葉県の関宿(せきやど)や木下(きおろし)も江戸川・利根川水系に位置する河岸である。釜屋商人は鋳物業から始まり、廻船業で発展し、利根川水系の産物を活かした醤油や酢などの醸造業をはじめ様々な業種で活躍し、現在も釜屋の屋号を持つ企業が各地にある。松尾芭蕉が釜屋商人と深い縁があり、近江が芭蕉の第二の故郷で、墓が近江にあることをはじめて知った。また、小名木川周辺に釜屋の遺物があることを知り、あらためて巡ってみたいと思った。

以上     文責:山本 秀美